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捨印の訂正効力は絶対?訂正の範囲で争い勝目はあるのか?

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捨印の訂正効力は絶対?訂正の範囲で争い勝目はあるのか?

捨印は悪用されないとは限らないので、安易に押してはいけない。

特にお金とか責任が絡んでくるような重要な書類には捨印を押さないに限る、とよく聞きます。

捨印があれば、借用書の借入金額も、返済条件も訂正できるというのです。

本当に捨印にはそれだけの効力があるものなのでしょうか。

捨印とはどのようなものなのか?
押しても心配ないものなのか調べました。

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捨印があれば重要事項もあとから訂正できる

捨印を用いての訂正には、これ以上の訂正は認められないよ、と捨印の効力が及ぶ範囲が法的に定められているわけではありません。

効力の有無は別にして、悪意があれば、捨印を用いて借用書の金額でもなんでも訂正することは形式上できてしまいます。

返済条件や金利なども、あとからから訂正して、貸主の都合のよい条件に変えてしまうことだってできます。

捨印を押す意味ってなに

本来の捨印の意味は、文書の訂正を簡単に済ませることにあります。

あとから文書を訂正する必要が生じたとき、そのたびに当事者間で文書を往復させて訂正箇所に訂正印を押して訂正していたのでは、手続きが煩雑になり時間もかかります。

文書に押印した人数が複数人であれば、人数分だけの訂正印が必要となりますので、文書の提出期限などがあった場合には間に合わなくなることもありますし、現実的ではありません。

ですから、「些細な誤記、明らかな誤字や脱字程度の訂正であれば、そちらで訂正しておいてください。」

と、相手側が訂正することをあらかじめ承認する意思を表す意味で、文書の余白部分に押しておく訂正印が「捨印」といわれるものです。

そのため、捨印を押した当事者は、文書の内容に大きな影響を及ぼすような訂正についてまでは承認していないつもりでいます。

合意に基づく訂正のみが認められる

訂正が認められるのは、当事者間の合意にもとづく訂正のみです。どのような内容であれ当事者間の合意にもとづかない訂正は認められません。

ただ、この合意は、明示的でなく黙示的なものでいいといいますから、ここに捨印の曖昧さがあります。

捨印による訂正で争った場合、裁判官が判断するポイントは、当事者間の合意に従った訂正なのか、そうでない訂正なのかということです。

捨印を用いての訂正に、どこまで当事者間の合意の有無が認められるのかが裁判の分かれ目になるはずです。

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訂正の合意を認めなかった最高裁の判例

最高裁昭和53年10月6日判決(金融法務事情878号26頁)というのがあります。

貸金契約の契約書で、遅延損害金欄は空白だったのですが、貸主から根抵当権設定を依頼された司法書士が、空欄だった遅延損害金欄に捨印を利用して遅延損害金年3割と補充がなされた事案です。

主たる争点は,この年3割という遅延損害金の割合について当事者間で合意が成立したかどうかという点にありましたが,最高裁は,遅延損害金の特約は認められない(その結果,遅延損害金は利息制限法1条所定
の年1割5分に減縮された利息と同率にとどまる)とした原審:広島高裁の判決を正当として是認し、以下の通り判決しました。

「金銭消費貸借契約証書に債務者のいわゆる捨印が捺印されていても、捨印がある限り、債権者においていかなる条項をも記入できるものではなく、その記入を債権者に委ねたような特段の事情がない限り、債権者
がこれに加入の形式で補充したからといって、当然にその補充にかかる条項について当事者間に合意が成立したものとみることはできない。」

最高裁が審議したのは、捨印による訂正の効力が及ぶ範囲はどこまでなのかという問題ではなく、

合意の証拠として「捨印」にどれだけの価値が認められるかが問題となったのです。

そして、最高裁では、捨印を押した当事者間には、空欄だった遅延損害金欄に遅延損害金を、年3割と補充することまでのは合意は成立していなかったと判断したのです。

でも、ここで疑問に思ったのが、どうして3割の金利は認められないが、利息制限法1条所定の年1割5分の金利は認められたかということです。

素人の私が想像するに、金銭消費貸借契約に損害遅延金を定めるのは当然のことで、単に記載するのを忘れただけなのだから、捨印を用いて金利を加入すること自体には黙示の合意が認められる。

ただし、金利の割合を3割にすることまでの合意は成立していなかった、と判断されたと思います。

黙示の合意ってなに?

捨印を用いての訂正が認められるのは、当事者間の合意に基づく訂正であって、合意に基づかない訂正は認められません。

ただ、この合意は黙示的(暗黙のうちに意思や考えを示すこと)であってもいいといいます。

捨印を押した当事者が、黙示的に合意しているのは、些細な誤記、明らかな誤字や脱字程度を訂正することであったつもりでも、周辺事情によってはその他の訂正についても黙示の合意が認められる余地が残ります。

ここに捨印の曖昧さがあるわけです。

前記の最高裁では、遅延損害金の割合を3割にすることに、当事者間の合意はなかったと判断されたのですが、

しかし、怖い話で、本当に合意などしていないのに、裁判官の心証によっては合意があったと判断されてしまうこともあります。

裁判所は、物事の真実を明らかにする場であると信じていたら、それは幻想です。

裁判所とは、裁判官をいかにして自分側に引き入れるかを競い合う場です。

戦う相手として見据えるべきは、相手側ではなく、裁判官その人です。

前記の最高裁の判断にしても、合意したつもりはないとした人が裁判官に対して悪い心証(この人の言うことはなんとなく信用するに値しないな…)を与えてしまったら、3割の金利に対しても黙示の合意があったと判断さ
れてもおかしくないのです。

裁判官は真実を判断してくれるわけではありません。

「こいつの言うことは信用できないな…」と思われたらそれで終わりなんです。

まとめ

相手が十分に信用のおける人物や機関でない限り、生活に大きく関わってくるような借用書とか連帯保証書や委任状やそのほか重要書類には捨印を押さないほうが、あとからトラブルに巻き込まれることもなく安全です。

捨印は押さないことがベストです。

また、捨印を押すなら、捨印のそばに、

「捨印については,明らかな誤字や脱字、書き損じなどの軽微で明白な誤記箇所を訂正する際に利用するものとする」などの付記や説明をしておくのも一つの方法です。

また、いやだったら、「訂正があれば、いつでも訂正印をもって伺います」と捨印の押印を拒否することもできます。

本来は、訂正する必要が生じない完璧な書類を作成すればいいのであって、最初から訂正することを見越して、あらかじめの訂正印である「捨印」を要求することが本末転倒なのです。

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