香典は葬儀に欠かせないものですが、通夜と葬儀のどちらで渡すべきかはよくある疑問点の一つです。
この記事では、そのような疑問に答えると共に、香典袋の表書きの正しい書き方、および式での香典の持参時のエチケットについても詳しく解説します。
通夜と葬儀のどちらで香典を渡すのがよい?
一般的な葬式は、通夜と葬儀・告別式の2日間に渡って行われることが多いです。最初の日の夜には「通夜」が行われ、参列者は故人との思い出を共有し、哀悼の意を表します。続く日には「葬儀・告別式」が実施され、これが故人との最後のお別れの場となります。
香典については、どちらの式にも参列する場合、どちらで持参すべきかと迷われる方もおみえですが、現在の慣例としては、通夜で香典を渡すのが一般的です。
この習慣は、比較的落ち着いた雰囲気の中で故人と向き合う時間が多い通夜の場が、香典を渡すにはふさわしいとされるためです。一方、葬儀・告別式は、多くの場合、形式が厳かであり、プログラムが密に組まれているため、香典を渡すタイミングを見つけるのが難しいこともあります。
そのため、通夜で香典を渡した場合は、翌日の葬儀や告別式では、受付で記帳のみ行い、「香典は通夜のときにお渡ししました」と伝えることが望ましいです。これにより、遺族もどの参列者が香典を渡したかを把握しやすくなります。また、記帳を行うことで、故人への敬意を改めて表現することができます。
香典をいつ渡すかは個々の判断に委ねられますが、このようなマナーを守ることで、遺族への配慮と故人への敬意が適切に表されることになります。これらの慣習を理解し、適切に行動することが、葬儀における礼節とされています。
香典はどのように渡せばはよい?
香典を葬儀で渡す際の正しい手順は以下の通りです。
- 斎場に到着して記帳する:
斎場に到着後、まず記帳を行います。これは故人への最後の敬意を示すとともに、参列の記録を残すためのものです。 - 香典の準備:
記帳後、袱紗(ふくさ)に包んだ香典袋を用意します。袱紗は日本の伝統的な布で、香典袋を包む際に使用されます。 - 香典の差し出し:
受付にて袱紗の上に香典袋を置き、表書きが見えるようにして受付係に差し出します。ここで重要なのは、香典袋を直接手渡すのではなく、袱紗の上に置いて差し出すことです。受付係がそれを受け取ります。 - お悔やみの言葉を添える:
香典を差し出す際には、「このたびはご愁傷様でした」といった適切なお悔やみの言葉を添えることで、哀悼の気持ちを表します。
この手順に従うことで、故人に対する敬意と遺族への配慮が適切に表現されます。また、香典の取り扱いが礼儀正しく行われ、遺族に対しても良い印象を与えることができます。
告別式やお通夜に持参する香典とは?
元々、香典は線香や香料を包んで故人に捧げるために贈られるものでした。これは、故人の冥福を祈るという宗教的な意味合いを持ちつつ、生前の故人とのつながりを感謝し、遺族に対する支援の意を示すための行為でした。
しかし、時代が進むにつれて、実際に線香や香料を贈る習慣は少なくなり、その代わりとして現金が包まれるようになりました。これにより、遺族が直面するであろう様々な費用への助けとなることが期待されています。
現在では、香典は葬儀や通夜に参列する際のマナーとして広く認識されており、故人との関係の深さや地域による慣習、経済的な状況に応じて包む金額が決められることが一般的です。このような変化は、社会の変遷や価値観の変化を反映しているとも言えますが、根底にあるのは故人への敬意と遺族への支援という原初の精神です。
香典袋を紺やグレーのふくさに包み、差し出す際には「ご霊前にお供えください」と一言添えるのが丁寧です。
また、故人やその家族の好みが明らかである場合、お金だけでなく、品質の良いお線香を選んで供えることも、心を込めた香典の形となり得ます。これは香典の元々の意味に基づいた行為であり、故人への敬意を表すための一つの方法と言えるでしょう。
告別式やお通夜に持参する香典の表書きのマナー
表書きの選び方は宗教や宗派によって異なります。以下に各宗教ごとの一般的な表書きを箇条書きで整理しました。
- 仏教:
- 一般的に「御霊前」という表書きを使用します。
- 浄土真宗では故人はすぐに成仏するため、「御仏前」と表書きするのが適切です。
- 神道:
- 「御神前」または「御榊料」が一般的な表書きです。
- キリスト教:
- 多くは「御花料」を使用します。
- カトリックでは「御ミサ料」が使われることもあります。
- 不確かな場合:
- 「御香料」や「御香奠(ごこうでん)」など、宗教間で広く使われる表書きが安全な選択です。
これらの表書きは、葬儀や追悼式において故人への敬意を表すために重要な役割を果たします。各宗教の教義や慣習に合わせて適切な表書きを選ぶことが望ましいです。
表書きの書き方にも特有の慣習があり、薄墨の筆ペンを使うことが望ましいです。薄墨を使用する理由は、文字が涙で滲んでいるかのように見せることで、故人への深い哀悼の気持ちを表現するためです。
香典袋の書き方
香典袋は「外包み」「内袋」に分けて書きます。
香典袋の「外包み」の書き方
香典袋の外包みには、特定の書き方が求められます。まず、水引の上部には表書きを記し、水引の下部には持参する人の名前をフルネームで記入します。
特に葬式では、同じ苗字の参列者が多くいるため、名前はフルネームで記載します。夫婦で香典を持参する場合、夫のフルネームを先に書き、その隣に妻の名前を加えます。
複数人で贈る場合は、それぞれの名前を並べて記載し、人数が多い(通常は4人以上)ときは、別の紙に名前を書いて添える方法もあります。
香典袋に名前を書く際には、薄墨の筆または筆ペンを使用するのが一般的です。この慣習には、「故人の死を悲しみ、墨を濃くする力がない」や「涙で墨がにじんだ」という意味が込められており、故人への哀悼の気持ちを象徴的に表現しています。
香典を入れる内袋の書き方
内袋の表面には、包む香典の金額を明記します。これにより、遺族が受け取った香典の金額を正確に把握できます。裏面の左下には、自分の名前と住所を正確に記入しましょう。
これは、遺族が香典を整理する際や香典返しを準備する際に非常に大事な情報となるからです。
香典の額は漢数字で表すのが一般的ですが、あらかじめ内袋に¥マークの欄が印刷されている場合は横書き数字でも構いません。
通夜と葬儀のどちらにも参列できない場合はどうすればよい?
急な訃報により通夜や葬儀に参列できない場合でも、香典を郵送することで弔意を示すことができます。ただし、郵便法により現金を普通郵便で送ることは禁止されているため、必ず現金書留を利用してください。現金書留を使う際は、ただお金を封筒に入れるのではなく、まずお札を香典袋に包み、それを現金書留用の封筒に入れて送るのが礼儀にかなっています。
香典を郵送する際は、式に参列できなかったことや故人への哀悼の意を表す手紙を添えると、受け取る側に対してより丁寧な印象を与えることができます。この手紙には謝罪の言葉と共に、お悔やみのメッセージを記載するとよいでしょう。
まとめ
香典は相互扶助の精神から生まれ、通夜や葬儀のいずれか一方への参列時に渡しますが、通夜に持参するのが一般的です。
金額は出す人の年齢や故人との関係性に依存します。表書きや不祝儀袋は宗教・宗派により異なりますが、「御霊前」や無地の不祝儀袋、黒白または双銀の水引が一般的です。
表書きは外包みに薄墨で、内袋には住所氏名金額を濃墨で記入し、香典袋の包み方にも特定の順序があります。葬式に参列できない場合は、代理人や郵送で香典を送ることも可能です。
本記事を通じて、正しい香典のマナーを学び、故人への敬意と遺族への配慮を示すことができます。故人へのお悔やみの気持ちを適切に表現しましょう。
香典返しとそのタイミング (新提案)地域別の葬儀と香典の習慣 (新提案)宗教別の葬儀と香典のマナー (新提案)通夜と葬儀のどちらにも参列できない場合はどうすればよい? (19)
通夜と葬儀のどちらにも参列できない場合はどうすればよい?
亡き人をしのぶための気持ちとして持参する「香典」。
ただ、この香典、お通夜と告別式(葬儀)のどちらのタイミングで持参すればよいのか迷う人もいるのではないでしょうか。
この疑問について、解説します。
基本の考え、「どちらか片方だけでいい」
お通夜と葬儀(告別式)両方に参加することになっても、香典を持っていくのはどちらか片方だけで構いません。
常識的な金額を香典袋に入れ、どちらかのタイミングで持参しましょう。
お通夜と告別式(葬儀)、どちらともに参加する場合であっても、片方の日は何も持って行かなくてもよいわけです。
これがまず大前提です。
どちらのときに持っていくか
ここからは、「では、どちらの時に持って行けばいいのか」を考えていきましょう。
実はこれには、明確な答えはありません。
ただ、平成23年に、一般社団法人の「全日本冠婚葬祭互助教会(全互協)がとったアンケートによれば、
通夜に持参 葬儀に持参
北海道 93% 7%
東北 35% 65%
北関東 69% 31%
東京 89% 11%
南関東 82% 18%
中部 68% 32%
近畿 77% 23%
中国 61% 39%
四国 16% 84%
九州 64% 36%
平均 66% 34%
東北地方では64.4パーセントが、
四国では84.1パーセントが、
「葬儀(告別式)に香典を持っていく」と答えています。
一方、北海道では93.1パーセントが、
東京では89.0パーセントが、
南関東では82.2パーセントが、
「お通夜のときに持っていく」と回答しています。
それぞれのデータをまとめると、
「香典をお通夜に持っていく」と答えた人の割合の方が、
「香典を葬儀(告別式)に持っていく」と答えた人の倍程度いることになりました。
また、この傾向は、近年特に顕著です。
それがわかりやすいのが「中国地方」です。
中国地方の場合平成18年のアンケートでは
「香典を告別式(葬儀)に持っていく」と答えた層が62.3パーセントいたのに対し、
平成23年のアンケートでは39.0パーセントに減っています。
このように考えれば、現在は、香典はどちらのタイミングで持って行っても構わないというのが原則ではあるものの、
お通夜に香典を持っていくという考え方の方が主流であると言えるでしょう。
平成28年度における調査はこうなりました
「通夜」と「告別式」のどちらに香典を持参したかを訊ねたところ、「通夜に持参」(5,418 件) と「告別式に持参」(2,007 件) の割合は73:27となっており、全対的には香典を「通夜に持参」する傾向が強くなっているとの結果となりました。
れを地域別にみますと、首都圏や近畿などの大都市を含む地域では、全体的な数字の通り「通夜に持参」の割合が多くなっております。しかし、東北と四国地方ではむしろ「告別式に持参」する割合が多く、故人との最期の別れである「告別式」を重要と考える傾向が窺えます。
このようなことから、全体的に都市部では「通夜に持参」する傾向が強く、地方では「告別式に持参」する傾向が強いことが窺えます。ただし、北海道・九州においてはこの見方が該当せず、「通夜に持参」する傾向が顕著に現れており、独特な地域性を表す結果となりました。【単位:件数】
お通夜と告別式(葬儀)に分かれる理由ってなに
ここではもう一歩進めて、香典を「なぜお通夜に持っていくのか、そしてなぜ告別式(葬儀)のときに持っていくのか」の理由を考えていきましょう。
お通夜に持っていく人が多い、というのは、
「夜で行きやすいから」ということもあると推測されます。
一応告別式(葬儀)にも行くつもりではあるが、仕事が休めるかどうかがまだ判然としないから確実にお渡しできるお通夜のタイミングでお渡しする、という人もいるでしょう。
また、実例として、「先にあるのがお通夜なので」という、とてもシンプルな理由を挙げている人もいました。
告別式(葬儀)のときに香典をもっていく、というケースの場合は、
「故人と会えるのはこれで最後だから」
「葬儀(告別式)の方が正式な場だから」
というものがあります。これももちろん、非常に納得のできる話です。
例外もある
「お通夜と告別式(葬儀)、両方に参列する場合はどちらか片方のタイミングで持って行けばよい。
そして、現在はお通夜に持っていくのが主流である」としました。
ただ、この「香典のあり方」というのは、地方や考え方によっても異なります。
香典をお通夜と告別式(葬儀)、両方のタイミングで出す、ただし、出す総額は同じくらい。
たとえば5万円が相場だとすると、
2万円と3万円に分けて出すという実例もあります。
このように、香典に関する「常識」は、一応の基準や考え方はあるものの、地域差や個人や家族によって異なることもあります。
どれが正解とはなかなか言い切れないので、一応の基準」を守りつつ、周りに合わせるのがよいでしょう。
そして、何よりも大切なのは故人を悼み、ご遺族を労わり、思い出をたどり、静かにお見送りをすることです。
香典というのは、その心の現れ方のうちの一つにすぎません。
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