「敷居が高い」と誤用!正しくはどう言い換えればいいのか?

ことわざ

「敷居が高い」という表現は誤用されることが多く、もともとの意味から逸脱して一般的に用いられることが多いことばです。この表現の本来の意味と適切な使い方を理解し、間違った使用法には気をつけることが大切です。

敷居が高いの意味

「敷居が高い」というのは、

不義理または面目ないことなどをして、相手と顔を合わせがたい事情がありその人の家に行きにくい。敷居がまたげない。

ということを表す言葉です。

つまり、「敷居が高い」という表現は、何らかの理由で、特に失敗や恥ずかしい出来事が原因で、特定の人の家を訪れたり、その人に会ったりするのが難しい状況を指します。

この言葉の背景には、家の内外を分けるために使われる木製の「敷居」が関係しています。

これは、家の入口や部屋の間に設けられており、家に入る際にはこの「敷居」をまたぐ必要があります。

ですが、相手と向き合う自信がない時、この「敷居」をまたぐことが困難になる、つまり「敷居が高く」感じられることから、このような表現が生まれました。

辞書による「敷居が高い」の説明

岩波書店の広辞苑(第六版)では「敷居が高い」を「不義理または面目ないことなどがあって、その人の家に行きにくい。敷居がまたげない。」と説明しています。

ところが、『三省堂国語辞典第7版』では、この言葉に「近寄りがたい」や「気軽に経験できない」などの意味をのせています。

対照的に、『明鏡国語辞典第2版』は、「敷居が高い」を「難易度が高い」と解釈するのは不適切であると指摘しており、「敷居が高い高級店」とか「初心者には敷居が高いゴルフコース」といった使用例は誤用であるとしています。

戦前の文献においては、「敷居が高い」という表現は、「不義理をしてしまったために訪問しにくい、行きづらい」という意味での使用例しか見られません。

現代的解釈が増えたとしても、戦前の時代を扱った映画やテレビドラマで、「敷居が高い」を「近寄りがたい」や「気軽に経験できない」の意味合いで扱う脚本家がいたらそれは変ですよね。

とはいえ、「近寄りにくい」「入りにくい」などは、「敷居が高い」の新しい意味として若い世代を中心に現代的な使い方として、すでに定着してきているようです。

それを物語るように、2018年1月に改定された「広辞苑(第七版)」では、

敷居が高い:不義理または面目ないことなどがあって、その人の家に行きにくい。また、高級だったり格式が高かったり思えて、その家・店に入りにくい。敷居がまたげない。

と、説明されてます。どちらの意味で使っても間違いではないということになったんでしょうか。

なんかすっきりしません。

しかし、「敷居が高い」の本来の意味は、不義理または面目ないことなど、相手と顔を合わせがたい事情がありその人の家へ行きづらい、敷居をまたげない状態を表した言葉です

敷居とは

敷居とは、家の門や玄関、部屋の出入り口などの引き戸や障子、ふすまなどをのせて、開け閉てするための溝が掘ってある横木のことです。

この家の門や玄関の敷居が高いと家の中に入りづらいですよね。

ヨッコラショと気合を込めて敷居をまたがないといけませんから、相手と顔を合わせがたい事情や負い目がある人にとっては、高い敷居に拒まれているような心持ちがして、余計に入りづらいものです。

「敷居が高い」若者70%以上が誤用の世論調査

文化庁が実施した「平成20年度国語に関する世論調査」の結果によると、日本語の表現「敷居が高い」の使用に関して、人々の解釈には明らかな違いがあります。

調査参加者の42%はこの表現を、「相手に対して恥ずかしい行動をしてしまい、訪問することが難しい」状況を表す伝統的な方法で使っていると答えました。
一方で、46%の人々は「高級すぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」という、より現代的な意味でこの言葉を用いていると報告しました。

残りの10%は両方の意味で使用していると述べました。

また、年齢による解釈の違いも顕著です。

  • 16歳から39歳の若年層の70%以上が現代的な意味での使用。
  • 50歳以上の年齢層の50%以上が伝統的な意味での使用。

をしていることが明らかになりました。

「敷居が高い」を誤用した例文(現代的な使い方)

「敷居が高い」の本来の使い方でない、誤用例を説明します。

本来「敷居が高い」のフレーズを使えるのは、下記の2つの条件がそろっている時です。

条件1:不義理または面目ないことなど、相手と顔を合わせがたい事情があること。
条件2:そんな事情を抱えているから、相手の家の敷居がまたげないと思っている。

上記のような気持ちがないのに、「敷居が高い」のフレーズを使うのは誤用であると思っています。

一般的な誤用の例は、単に「上品すぎてたり、高級すぎたりして、入りづらい」という意味になっています。

  • 「あの店はドレスコードが必要で、敷居が高い」
  • その高級レストランは料理が素晴らしいと聞くが、値段が高くて敷居が高い
  • 「初心者には敷居が高いゴルフコース」
  • 「何んとなく敷居が高い」
  • 5つ星レストランだけど、敷居の高さを感じない落ち着きがある。
  • 長い間連絡を取らなかった古い友人に連絡するのは、敷居が高いと思うことがある。
  • 友人が有名人になってから、彼に連絡するのに敷居が高くなってしまった。
  • 有名な画家の展示会に行くことは、私にとっては敷居が高い。
  • 担当者が変わった後、その企業との取引が敷居が高いと感じるようになった。

これらは高級な場所に行くことや、難易度の高さに躊躇する気持ちを表すために「敷居が高い」という言葉を使っていますから、誤用といえます。

ただ、今では現代的な使い方として世間に広く認知されている現実があります。

敷居が高いの伝統的な使い方

「敷居が高い」のフレーズを使えるのは、下記の2つの条件が揃っているときです。

条件1:不義理または面目ないことなど、相手と顔を合わせがたい事情があること。
条件2:そんな事情を抱えているから、相手の家の敷居がまたげないと思っている。

「敷居が高い」の伝統的な使用例

敷居が高いの本来の意味とは、不義理などにより行きにくいこと。

「敷居が高い」という表現は、「相手の家に訪問しにくい、不義理や体裁の問題が原因で」という意味合いを持ちます。

例えば、「長い間伯母に会っていないため、今更彼女の家に行くのは気が引ける」という文脈で使われることがあります。

ビジネスの場でも同様に使われ、「最近のある会社のプレゼンテーションがうまくいかず、その会社を訪問するのが難しく感じられる」という状況で使用されることがあります。

  • 彼女は以前不義理なことをしてしまったため、今はその友人の家が敷居が高いと感じている。
  • 以前のミスにより、部長のオフィスへの訪問は私にとって敷居が高い。
  • 以前は普通に訪れていたが、ある理由で行きづらくなり、敷居が高くなった。
  • 何度も訪問を促されているが、あれだけの迷惑をかけたのだから、敷居が高くて訪問しづらい。
  • 長年お世話になっていながら、不義理をしているので、あの人の家は敷居が高い。

「敷居が高い」の類語・言い換え表現

ハードルが高い

高級店や格式の高い場所への入店をためらう際には、「敷居が高い」ではなく、「ハードルが高い」と表現すべきですです。

「ハードルが高い」という表現は「克服すべき課題が大きい」ことを意味しますが、「あの店はハードルが高い」と言い換えて使うことができます。

ビジネスシーンにおいて「敷居が高い」という言葉は、不義理や信用を失ったことが原因で、ある場所への訪問が難しくなった状況を表す際にも使用されます。

たとえば、「以前は普通に訪れていたが、ある理由で行きづらくなり、敷居が高くなった」といった状況でよく使われます。「何度も訪問を促されているが、敷居が高くて訪問しづらい」といった文脈でも使用されます。

このフレーズの誤用を避け、適切な状況でのみ使用しましょう。また、似た意味を持つ他の表現としては「門を塞ぐ」「委縮する」「頭が上がらない」などがあります。これらの表現も、適切な文脈で使えるようになると便利です。

「門を塞ぐ」「委縮する」「頭が上がらない」「気後れ」「合わせる顔がない」などの表現は、「敷居が高い」と同じく、不義理や恥ずかしさの感覚に基づく状況を表す際に有用です。これらのフレーズは、特定の状況で「敷居が高い」という表現の代わりに使用することで、より正確に感情や状況を伝えることができます。

  • 「門を塞ぐ」は、「自らの行動で相手の家に行きにくい状況を作ってしまった」場合に適しています。
  • 「委縮する」は、「元気や自信がなくなってしまう」ことを指し、「敷居が高い」のように気後れや緊張感を表す場面で使えます。
  • 「頭が上がらない」は、「相手に対して劣等感や敬意を感じている」状況を表現するのに適しています。
  • 「気後れ」は、恥や緊張により気落ちすることを指します。一方、「敷居が高い」という表現は、何らかの失礼や過ちが原因で、気後れ感じる状態を表す言葉です。両者は類似した意味を持ちますが、「気後れ」自体には「人の家へ訪問するのが難しい」という意味合いは含まれていません。したがって、「気後れ」を使う際は、「その出来事以降、友人宅へ足を運ぶのが気が引ける」といった形で、訪問の難しさを表現する必要があります。
  • 「合わせる顔がない」は、申し訳なくて、その人の前に出られないこと。こちら側に非があり、相手に顔向けできないときに使う表現です。

これらの表現を適切に使い分けることで、日常会話やビジネスシーンでのコミュニケーションがより豊かになります。

誤用が多い言葉、「敷居が高い」を正しく使いましょう。

「敷居が高い」という表現の意味と適切な使用方法について、これまでの理解が正確であったかどうかを考えてみましょう。もし間違った解釈で使用していた場合は、この機会に正しい意味を学び、適切な状況で使うよう心掛けましょう。

「敷居が高い」というフレーズは、通常、不義理や恥をかくことなどの理由から、誰かの家や場所に行くことに躊躇する状況で使われます。この基本的な意味を理解し、ビジネスなどの様々なシーンで適切に使い分けることが重要です。

まとめ

「敷居が高い」という言葉は、その意味する後半部分の「行きづらい、とか、行くのに気が重い」のところだけを切り取って使われることがじつに多いです。

「なぜ行きづらいのか」、という肝心の前提部分がスッポリ抜け落ちているのです。

これでは、間違った使われ方がだんだんと認知されていこうというものです。

でも、国語は生き物なんですね。
いずれは、単に「その家に行くのが、行きずらい」ということを「敷居が高い」ということになるかもしれません。

正しい日本語がすたれていくのは、悲しいことですね。

最後に

「敷居が高い」は、「義理を欠いてしまったためにその人に会いにくい」という意味の言葉です。「敷居が高い」を、「高級すぎるために気軽に行きにくい」という意味で覚えていた人も多かったのではないでしょうか。これを機会に本来の意味をしっかり覚えて、正しく使えるようになっていきましょう。

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